ポートレート用のレンズを探すと、85mm F1.4 のような大きくて高いレンズが最初に出てきます。ただ、人物を撮るのに必ずしもそれが要るわけではありません。撮る場所の広さと、持ち歩ける重さで答えが変わります。
この記事では、当サイトが収録しているレンズの仕様から、マウント別に候補を挙げます。数値はメーカーの公表値です。
結論
- 屋外で少し離れて撮るなら85mm。背景が整理され、顔の形が自然に写ります。ただし後ろに3〜5m下がれる場所が要ります。
- 室内や狭い場所が多いなら50mm。2mほどで上半身が入ります。85mmだと壁に背中がつきます。
- 最初の1本はF1.8クラスで十分。F1.2との差は、ボケの大きさより値段と重さに出ます。
- APS-Cなら56mm前後、マイクロフォーサーズなら42mm前後が、フルサイズの85mm相当です。
85mmと50mm、どう違うか
| 85mm | 50mm | |
|---|---|---|
| 上半身が入る距離 | 3〜4m | 2m前後 |
| 全身が入る距離 | 6〜7m | 4m前後 |
| 背景 | 狭く切り取れる。整理しやすい | 広く入る。場所も一緒に写せる |
| 顔の写り方 | 自然。鼻や輪郭が誇張されない | 寄るとやや誇張される |
| 向く場所 | 公園、河川敷、広いスタジオ | 室内、カフェ、狭い路地 |
| 会話のしやすさ | 距離があるので指示が届きにくい | 近いので話しながら撮れる |
撮る相手が家族や友人なら、話しながら撮れる50mmのほうが自然な表情が出ることがあります。85mmは「作品として撮る」向きです。
マウント別の候補
「まず1本」は価格と重さを抑えたもの、「上位」は開放F値を優先したものです。
| マウント | まず1本(85mm相当) | 質量 | 上位 | 質量 |
|---|---|---|---|---|
| Canon RF | RF85mm F2 MACRO IS STM | 500g | RF85mm F1.4 L VCM | 636g |
| Nikon Z | NIKKOR Z 85mm f/1.8 S | 470g | NIKKOR Z 85mm f/1.2 S | 1160g |
| Sony E | FE 85mm F1.8 | 371g | FE 85mm F1.4 GM II | 642g |
| Lマウント | LUMIX S 85mm F1.8 | 355g | SIGMA 85mm F1.4 DG DN | Art | 630g |
| FUJIFILM X | XF56mmF1.2 R WR | 445g | XF90mmF2 R LM WR | 540g |
Sony Eマウントには SIGMA 85mm F1.4 DG DN | Art(630g)も使えます。純正のGM IIと質量がほぼ同じで、価格で選ぶ余地があります。この2本の比較ページも用意しました。
50mmで撮るなら
| マウント | 手が届きやすい1本 | 開放 | 質量 |
|---|---|---|---|
| Canon RF | RF50mm F1.8 STM | F1.8 | 160g |
| Nikon Z | NIKKOR Z 50mm f/1.8 S | F1.8 | 415g |
| Sony E | FE 50mm F1.8 | F1.8 | 186g |
| Lマウント | LUMIX S 50mm F1.8 | F1.8 | 300g |
| FUJIFILM X(35mm相当) | XF50mmF2 R WR | F2 | 200g |
RF50mm F1.8 STM の160g、FE 50mm F1.8 の186gは、標準ズームの3分の1以下です。「鞄に入れておく1本」として無理がありません。
F1.2とF1.8で、どれだけ違うのか
絞りが1段開くと、背景のボケは大きくなり、シャッター速度は2倍に上げられます。F1.2とF1.8の差は約1.2段です。
| F1.2クラス | F1.8クラス | |
|---|---|---|
| ボケの大きさ | 大きい | 十分大きい(背景は溶ける) |
| ピントの合う範囲 | 非常に浅い。睫毛に合わせると耳が外れる | 浅いが扱いやすい |
| 質量(85mm・フルサイズ) | 1160〜1195g | 371〜500g |
| 価格帯 | 高い | 手が届く |
実際にはF1.2のレンズでも、目と耳の両方にピントを残したくてF2まで絞ることがよくあります。そこまで絞るなら、写りの差は小さくなります。最初からF1.8クラスで始めて、足りないと感じたときに買い足すほうが失敗しません。
ズームで済ませる選択肢
単焦点を持ち歩きたくない場合、次の3通りがあります。
- 70-200mm F2.8。85mmから200mmまで1本でこなせます。屋外の撮影会や発表会向き。重さは1kg前後。ソニーとシグマの比較も用意しています。
- 24-70mm F2.8。寄りも引きも1本で。F2.8なので背景の整理は単焦点に劣ります。
- 35-150mm F2-2.8。TAMRON 35-150mm F/2-2.8 Di III VXD(Eマウント)は、広角端F2・望遠端F2.8という変わった構成で、人物撮影では便利な1本です。
カメラは何が向くか
ポートレートでカメラ側が効くのは、瞳を検出して追い続けるAFです。現行機はどのメーカーも人物の瞳検出を備えているので、この点で大きく外すことはありません。画素数は、大きくプリントしないなら2400万画素で足ります。
- 肌の色の出方はメーカーで違います。FUJIFILMのフィルムシミュレーション、Canonの標準設定などは、そのまま使える色として評価されています。ここは好みなので、作例を見て決めてください。
- 高画素機は肌の粗も写します。6100万画素クラスは、レタッチの手間が増えます。
よくある質問
APS-Cのカメラで85mmを使うとどうなりますか
画角は約127mm相当になります。上半身を入れるのに5m前後必要になり、屋内では使いにくくなります。APS-Cなら56mm前後(XF56mmF1.2 R WR、SIGMA 56mm F1.4 DC DN)が85mm相当です。
手ブレ補正は必要ですか
85mm前後なら、シャッター速度を1/125秒以上にしておけば手ブレはほぼ止まります。人物が動くぶれのほうが問題になるので、補正よりシャッター速度です。ボディ内手ブレ補正があるカメラなら、レンズ側になくても困りません。
中古でも大丈夫ですか
単焦点は構造が単純で、ズームより状態が安定しています。カビと絞り羽根の動作だけ確認できれば、中古は現実的な選択肢です。