レンズの名前には必ずF値が入っています。「F2.8」「F1.4」「F4-6.3」。数字が小さいほど良いレンズ、という説明をよく見かけますが、その差が実際に何をもたらすのかは分かりにくいところです。
この記事では、F値が写真のどこに効くのかを整理します。
結論
- F値が小さい=レンズが明るい。同じ場所で、より速いシャッターが切れます。
- F値が小さい=背景がぼける。ピントの合う範囲が狭くなります。
- 1段小さくすると、必要なISO感度は半分になります。F2.8→F2.0→F1.4が1段ずつです。
- 暗い場所で撮らないなら、F4でも困りません。そのぶん軽く安くなります。
F値は「レンズの明るさ」
F値は、レンズが取り込む光の量を表す数字です。数字が小さいほど光をたくさん通します。分数の分母だと考えると分かりやすく、F2はF4の4倍の光を通します。
| F値 | F2.8を基準にした光の量 | 同じ明るさに必要なISO感度 |
|---|---|---|
| F1.4 | 4倍 | ISO400 |
| F2.0 | 2倍 | ISO800 |
| F2.8 | 1倍 | ISO1600 |
| F4.0 | 1/2 | ISO3200 |
| F5.6 | 1/4 | ISO6400 |
| F8.0 | 1/8 | ISO12800 |
F値の刻みは 1.4 → 2 → 2.8 → 4 → 5.6 → 8 → 11 → 16 と並びます。隣同士が「1段」で、光の量は2倍または半分です。数字が √2 倍ずつ増えているのは、レンズを通る光の面積が2倍ずつ変わるようにするためです。
F値とボケの関係
F値を小さく(開放に)すると、ピントの合う範囲(被写界深度)が狭くなり、前後がぼけます。
| F値 | ピントの合う範囲 | 向く場面 |
|---|---|---|
| F1.2〜F1.8 | 非常に狭い。目に合わせると耳が外れる | 人物、暗い室内、星空 |
| F2.8〜F4 | 狭い。人物の顔全体は入る | 人物、スナップ、屋内スポーツ |
| F5.6〜F8 | ほどよい。集合写真も収まる | 風景、記念写真、物撮り |
| F11〜F16 | 広い。手前から奥まで | 風景、建築 |
ただし、ボケの大きさを決めるのはF値だけではありません。被写体に近づくほど、そして背景が遠いほどぼけます。F4のレンズでも、被写体に寄って背景を遠ざければ十分にぼけます。
「F値通し」のズームとは
ズームレンズには2種類あります。
| 表記 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| F2.8(通し) | ズームしても明るさが変わらない | FE 24-70mm F2.8 GM II |
| F4-6.3 | 望遠にすると暗くなる | RF24-240mm F4-6.3 IS USM |
通しのズームは、ズームしても露出が変わらないので撮影が安定します。動画では特に効きます。ただし大きく重く、価格も上がります。
望遠端が暗くなるズームは、その分だけ軽く安くなります。屋外で使うなら実用上の問題は少なく、旅行用としてはむしろ扱いやすい選択です。
どのF値を選ぶか
| 撮るもの | 目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 室内の子ども・ペット | F1.8以下 | 動くものをぶれずに止めるため |
| 人物(屋外) | F1.8〜F2.8 | 背景を整理する |
| 風景 | F5.6〜F11 | 手前から奥まで写す。明るさは三脚で補える |
| 星空 | F2.8以下 | 秒数に上限があるため(星空を撮る機材) |
| 運動会(屋外) | F5.6〜F6.3で足りる | 明るいので、望遠距離を優先する |
| 発表会(屋内) | F2.8以下 | 暗いうえに動く |
よくある質問
F値が小さいレンズは、なぜ高いのですか
光をたくさん通すには、レンズの直径を大きくする必要があります。ガラスが大きくなり、収差の補正も難しくなるため、枚数と精度が増えます。結果として重く高くなります。RF85mm F1.2 L USMは1195g、RF85mm F2 MACRO IS STMは500gです。
「開放」とは何ですか
そのレンズで設定できる最も小さいF値のことです。F1.8のレンズなら、F1.8が開放です。
T値という表記を見ました
映画用レンズで使われる、実際に通る光の量を測った値です。F値は計算上の値なので、ガラスでの吸収を含めると少し暗くなります。写真用レンズではF値表記が普通です。
スマートフォンのF1.8とカメラのF1.8は同じですか
明るさとしては同じですが、ボケ方は違います。ボケの大きさはセンサーサイズにも左右されるためです(センサーサイズの違い)。スマートフォンの背景ぼかしは、多くがソフトウェアによる処理です。